タミフル耐性

寝ながらネットサーフィンしてたら夜が明けた.世間にはセンター試験でひぃひぃ言ってる受験生たちが何万といるというのに….ほんと,ごめんなさい.

そういえば,駒場の保健センターにはリレンザは置いてないらしい.聞いてみたけど,うちにはタミフルしかないので,もしリレンザが欲しいなら処方箋は書くけど他の調剤薬局に行って買ってもらうことになるとのこと.面倒なのが嫌だったのと,あまり思考回路が働いてなかったのとあって,タミフルでいいですという返事をした.

けど,今年のAソ連型(H1N1)をサンプリング調査した結果,35検体中34検体でタミフル耐性を示したのだという.97.14%.これは明らかに高い.自分が罹っているのがAソ連型かA香港型かは聞くのを忘れてしまった…(チェックキットってそこまで分かるんだっけ?).

せっかくなので,ちょっと科学っぽい話を.

まず,インフルエンザの分類から.人の血液型(ABO式)にはA型,B型,AB型,そしてO型の4種類があるが,インフルエンザにはA型,B型,C型の3種類がある.もちろん,このインフルエンザのA型と人の血液型のA型とはまったく関連がない.たまたま同じ名前になっただけ.B型についても同様.ここから先は今回私が罹ってしまったA型だけに話を限る.A型インフルエンザについては,さらに144通りの分類がなされている.

インフルエンザウィルスは自分自身では増えることができず,人など動物の細胞にとりついて人の細胞が増えるメカニズムをいわば無断借用して増えていく.ずるい奴らだ.でもウィルスにとっては,動物細胞にとりつけるかどうかが死活問題.A型インフルエンザは細胞にとりつくための鍵みたいなのを持っている.それがヘマグルチニン.日本語では赤血球凝集素という.こいつが細胞表面にあるシアル酸という物質とくっついて,細胞がウィルスを取り込んでしまう.あぁ,細胞のおばかさん….そして細胞内でコピーを増やしたウィルスは,今度は細胞から脱出し,他の細胞を使ってまた自分のコピーを作ろうとする.ところが,出て行くときにはさっきのシアル酸とヘマグルチニンの結合が邪魔になる.くっついてしまってとれない.この結び目をきるのがノイラミニダーゼ.はさみのようにチョキンと切って,例もいわずに他の細胞へと旅立っていく.ヘマグルチニンには16,ノイラミニダーゼには9種類のヴァリエーションが確認されているので,組み合わせ総数はなんと144通り.これがさっきの144通りの分類の正体だ.

これら144種類は,それぞれヘマグルチニンの頭文字Hとノイラミニダーゼの頭文字Nを使って,H1N1とかH2N2などのように示す.現在,新型インフルエンザとして最も恐れられているH5N1もヘマグルチニン(H5)とノイラミニダーゼの(N1)組み合わせでできた名前.何となく分かってもらえただろうか….

今度は自分のためのメモ書きとして.ノイラミニダーゼ蛋白質の275番目(H275Y*1)のアミノ酸ヒスチジンからチロシンに置換していることをもってタミフル耐性と判断しているらしい.たった1個のアミノ酸が変わるだけで耐性をもたれてしまうだなんて,タミフルさんもヤワねぇ(とはいえ鎌状赤血球もしかり,たった1個のアミノ酸の違いが大きな違いを生むことはよく知られている).自分が今罹ってるのはタミフル耐性もってるやつか???

*1:各種論文ではH274Yの表記をしているが,これは,H3N2亜型ウイルスのNA蛋白質アミノ酸番号をもとにした表記法(N2表記法)であり,H1N1のNA蛋白質の場合は,耐性マーカーのアミノ酸番号はメチオニンから数えて275番目となる.